「起業には大きな志が必要」と言われることがあるが、起業時から崇高な志を持っている起業家はほとんどいない。
若ければ若いほど「金持ちになりたい」「名声が欲しい」といった自己顕示欲が起業理由になっているケースがほとんどではないだろうか。
しかし、組織が成長する中で感じる「責任感」が起業家が持つ自己顕示欲を減少させる。
おそらく多くの起業家が経験しているであろう、この心境の変化を紹介したい。
起業前(20代)の心理
私が20代のころはサイバーエージェントの藤田さん、ライブドアの堀江さんなど「ヒルズ族」にスポットがあたっており、自分自身もあんな風になりたい・・・と思ったものだ。
単純に「いい家に住みたい」「いい服を着たい」という思いから起業を考えていた。
判断基準は常に「お金」
この頃の私はアフィリエイト、情報商材、ネットワークビジネスなど不労所得を目的としたようなビジネスに興味を持ち、楽に金持ちになる方法はないかを模索し続けていた。
起業準備中(30代)の心理
30代になると成功している起業家と自分を比較しながら「このままの人生で良いのか?」と心に問いかけるようになる。
「起業して大企業を作り、歴史に名を残したい」
「あの人のように尊敬されたい」
20代で持っていた「お金を稼ぎたい」いう思いよりも「周りからの評価(名誉)」を求める気持ちが強くなり、大金を手にしても「周囲からの評価がなければ意味がない」と感じはじめる。
起業後(30代中盤~40代)の心理
起業した事業が軌道に乗り始め、ユーザから感謝を伝えられる機会が増えると、徐々に名誉や感謝を求める気持ちが弱くなっていく。
「お金」、「名誉」といった見返りを求める雑念が減少し、
「自分が関わる業界の問題を解決したい」
「社員やユーザーを喜ばせたい」
という純粋な気持ちが大きくなってくるのだ。
私の場合、同時期に子供が産まれたことも大きいが、
「子供たちの未来を自分達が作っていかなければいけない」
という使命感も同時に持つようになっていった。
起業時に大きな志はいらない
この変化は「何故歌手になったんですか?」と質問された一流アーティストが「モテたかったから」と回答するケースに似ているのではないかと思う。
「モテたい」とう雑念から始まったアーティスト活動も、実力を身に着けることで「歌で人々を勇気づけたい」と語るようになっていく。
誰もが最初から大きな志があるわけでなく「お金」や「名誉」のために起業する人のほうが多い。
しかし、苦しみの中で事業を成長させたとき「煩悩>使命感」という状態が「煩悩<使命感」となり、大きな志が芽生えてくるのではないだろうか。