「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
私はリクルート創業者の江副さんが書いた「リクルートのDNA」という本でこの言葉を知った。
「何てパワーのある言葉なんだろう」
ソフトバンク(当時:ボーダフォン)で働いていた20代の私はこの言葉に引き込まれ、「この言葉を生み出したリクルートで働いてみたい」と思った。
何故、この言葉がこれほどまでに人々を魅了するのか?
実際にリクルートに転職して6年間働いた経験、その後起業して7年ほど会社経営を続ける経験を経て、私は「この言葉の持つ力」がリクルートが事業成長を支えているのだと確信した。
「自ら機会を創り出す」とは何か?
・ルールに従って、営業をする
・ルールに従って、データを集計する
・ルールに従って、システムの保守・運用をする
大企業のサラリーマンの多くは、このように会社のルールに沿った働き方をしているのではないだうか?
大企業は先人が作り上げたビジネスプロセスに従い、決められたことを、決められた通りに実行することで、既存事業の売上を守ろうとしている。
この働き方を悪いとは言わないが、ルール通りに動くだけの会社は時代の変化に対応できず、衰退していくことは間違いないだろう。無論、これは「自ら機会を創り出す」仕事ではない。
視点を少しだけ変えて、
・今までとは違った業界に営業をしてみる
・今までと違う観点でデータを集計してみる。
・今までと違う観点でシステムの保守・運用の軽減を考えてみる
このような働き方をするだけで、新しい課題が見えてくる。
例えば、違う業界のお客さんに営業をすることで新たなマーケット課題が見つかったり、違う観点でデータ集計をすることで気づけなかった問題点が見つかったり、新たなシステム導入の話が進むこともあるだろう。
これが「自ら機会を創り出す」働き方だと言える。
事業改善・事業拡大を自ら考え抜くことで新たな仕事を生み出し、自ら実行することこそが、自ら機会を創り出すということなのだ。
「機会によって自らを変えよ」とは何か?
「機会によって自らを変えよ」とは「自ら生み出した仕事を自分自身を成長機会にしろ」という意味。つまり、「成長するチャンスがあれば手を上げろ」ということだ。
例えば、リクルートの「新規事業提案制度(NewRing)」でグランプリを獲得した場合、提案者は事業責任者として事業を立ち上げるチャンスをもらえる。
リクルートは「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」の言葉通り、機会を創り出した人に対して、成長する機会を確実に与えているのだ。
事業成長の本質
私は起業してから「事業課題がなくなる」ことが怖いと感じている。正確には「事業課題に気付けなくなる」ことが怖いといったほうが良いだろうか。
リクルートを退職してから気付いたことだが「事業課題に気付けない」というのは「自ら機会を創り出せていない」ということに等しい。
幸い私が経営するアイデアログは事業課題が山積みで、どれから手を付ければよいか迷うほどだが、1つずつ課題をクリアしながら創業から7年連続で成長を続けてきた(今期はコロナというピンチを迎えているが・・・)。
リクルート、サイバーエージェント、トヨタ自動車など一流企業含め、成長企業は漏れなく多くの事業課題を抱え(=多くの事業課題に気付き)、その事業課題に対して「私がやります!」と手を上げる社員が存在している。そして会社は手を上げた社員にチャンスを与えるのはもちろん、チャレンジを賞賛する文化、失敗を許容する文化が存在している。
「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
この言葉が人々を魅了するのは、事業成長の本質をついた言葉であるからではないだろうか。
企業が事業成長を続けるには、
「自ら機会を創り出す」成長意欲が高い人材を採用・育成し、「機会を与える」制度・文化を準備し、「社員が成長するチャレンジを増やし続ける」ことが重要なのだと私は確信している。