名著「科学的な適職」の要約~仕事の幸福度を決める7つの徳目~

「幸福度が高い仕事の条件」と言われて、どのような条件が頭に浮かびますか?

・安定している大手企業
・待遇が充実した企業
・売上や利益が伸びている企業

など、転職する人の多くは「企業規模」「待遇」「成長状況」に惹かれて転職することが多いようです。

しかし、大手企業も倒産しますし、売上が伸びているブラック企業も多数存在しますので、「企業規模」「待遇」「成長状況」だけで「幸福度が高い仕事」だと判断することはできません。

私も数多く「仕事と幸福度の関係」に関する書籍を読んできましたが、その中で「科学的な適職」という書籍に出会いました(書籍はこちら「科学的な適職 著者: 鈴木祐」)

本著では4021もの研究データを元に「幸福度が高い仕事の7つの条件」を提示してくれています。
この7つの条件は科学的な検証データを元に書かれており、私の過去の経験と照らし合わせても非常に納得感がある内容でした。

転職を考えている皆さんに読んでいただきたい名著「科学的な適職」のうち、私が最も共感した「幸福度が高い仕事の条件(仕事の幸福度を決める7つの徳目)」をご説明させていただきます。

※こちらは記事では全容を理解できるように要約いますが、さらに詳しく知りたいと思った方は、ぜひ購入して読んでみてくださいね!(kindleで購入すれば、すぐに読むことができます)

仕事の幸福度を決める7つの徳目

以下の7つの条件を多く満たす仕事を選べば幸福度が高い職場を選べることは間違いないでしょう。幸福度が高い仕事の条件を抑えるために「転職時に確認すべきこと」についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

①自由(その仕事に裁量権はあるのか?)

仕事の裁量権というのは「自分自身で仕事の進め方を決められる自由度」と説明するとわかりやすいかもしれません。裁量権がある仕事というのは、就業時間に自由に休憩を取ることができたり、仕事のやり方も自分なりに考えて進められる仕事です。

反対に「労働時間や休憩時間を決められている仕事」や「マニュアル通りに進めることしか許されない仕事(工夫することが許されない仕事)」は裁量権がない仕事と言えるでしょう。

★エビデンス例
(1)ロンドン大学が公務員を対象に行った別の研究では
・タバコを吸うけど、会社内の自由度が大きい
・タバコは吸わないが、会社内の自由度が小さい
という2つのグループに分けて調査したところ、「タバコは吸わないが、会社内の自由度が小さい」人のほうが体を壊しやすく、慢性病にかかる確率も高い傾向があり、自由度はタバコよりも私たちの健康に大きな影響を及ぼすことが証明された。
★転職時に確認すべきこと
・労働時間はどこまで好きに選べるか?
・仕事のペースをどこまで社員の裁量に委ねられているか?

②達成(前に進んでいる感覚は得られるか?)

仕事における「達成」というのは、自分自身が行ったことにアクションに対してフィードバックを受けられる環境かどうかを表します。分かりやすいのは「成果を出す」⇒「給料が上がる」という給与制度等になりますが、著者は昇給などの大きな達成より、「頻繁に起こる小さな達成」が仕事のモチベ―ションを大きく左右すると言っています。

例えば、
・提案書を上司から褒められた
・お客さんから「いつもありがとう」と言ってもらえた
・システムのバグを1つ解消させることができた

など、1ヶ月の間に何度も小さな達成感を味わえるような仕事ほど幸福度を感じるのです。

★エビデンス例
(1)ハーバード大学が238人のビジネスマンに対して12000時間に渡って実施した調査
「人間のモチベーションがもっとも高まるのは、少しでも仕事が前に進んでいるとき」という調査結果が得られた(2)コロンビア大学の実験
・「コーヒーを10杯買えば無料で1杯サービス」と書かれたスタンプカード
・「コーヒーを12杯買えば無料で1杯サービス」だが、既に2つスタンプを押されているスタンプカード
⇒同じ10杯が必要なスタンプカードでも、後者のほうがスタンプが溜まるスピードが速い。「前進の錯覚」と呼ばれるが「少しでも前に進んでいる」ことがモチベーションを高めることがわかった。

★転職時に確認すべきこと
・仕事のフィードバックはどのように得られるか?
・仕事の成果とフィードバックが切り離されていないか?

③焦点(自分のモチベーションタイプに合っているか?)

モチベーションタイプとは人を「攻撃型」「防御型」という2つタイプに分ける考え方です。
タイプに合った仕事を選ぶ(焦点を合わせる)ことで、より幸福度を感じやすくなります。

「攻撃型とは」
目標を達成して得られる「利益」に焦点を当てて働くタイプ。競争に勝つことが好きで、金や名誉などの外的な報酬に強い影響を受ける傾向があります。
※【攻撃型に適した職業】コンサルタント・アーティスト・テクノロジー系、ソーシャルメディア系、コピーライタ―など、人の動きが速い業界の仕事。
「防御型とは」
目標を「責任」の一種と捉え、競争に負けないために働くタイプ。自分の義務を果たすのが最終的なゴールでできるだけ安全な場所に身を置こうとする傾向があります。
※【防御型に適した職業】事務員、技術者、経理、データアナリスト、弁護士など実務能力が必要な仕事。

具体的には、「攻撃型」の人が経理の仕事に就いたり、「防御型」の人が動きの早いテクノロジー系の企業に身を置くことで幸福度を感じにくくなってしまうということでしょう。

★エビデンス例
(1)2012年に実施された105例のメタ分析
⇒「攻撃型」と「防御型」の区別を行なうことで、職場の満足度や仕事への取り組み方を予測できることが報告されている。(2)295人のアルバイトを対象とした愛知学院大学のの実験
⇒モチベーションタイプが仕事場でのやる気と大きく相関を示した。
★転職時に確認すべきこと
・攻撃型の場合⇒進歩や成長を実感しやすい仕事であること
・防御型の場合⇒安心感と安定感を実感しやすい仕事であること

④明確(なすべきことやビジョン・評価軸はハッキリしているか?)

自分自身がやるべきタスク(上司の指示)が明確になっている職場、また。その達成度による評価軸がハッキリしている会社ほど幸福度を感じやすいということも重要な要素です。指示が曖昧で何をすれば良いのかわからなかったり、賃金制度が不明瞭で成果を出しても評価されない職場はストレスを感じる機会が多くなることも理解できる方が多いのではないでしょうか?

★エビデンス例
(1)南フロリダ大学のメタ分析:「どんな職場で働くと体を壊すのか?」という疑問にこたえる研究
タスクの不明確さは社員の「慢性疲労」「頭痛」「消化器官の不調」と大きな相関を示し、特に悪影響が大きかったのは「仕事で何を求められているのかがわからない」「上からの指示が一貫しない」の2つであった。
★転職時に確認すべきこと
・その会社に明確なビジョンはあるか?そのビジョンを実現するために、どのようなシステム化を行なっているか?
・人事評価はどのようになされているか?個人の貢献と失敗を目に見える形で判断できる仕組みは整っているか?

⑤多様(作業の内容にバリエーションはあるか?)

経営理論で考えると「従業員には特定の役割を与え、その業務に集中させること」が重要だとされていますが
・自分が持ついろんなスキルや能力を幅広く活かすことができる
・業務の内容がバラエティに富んでいる
という2つの条件を満たすほど、幸福度が高くなるようです。
例えば、経理部門で給与計算担当、経費精算担当、請求書処理担当と分けてしまうことで生産性は上がる可能性がありますが、職場に退屈感が広がり、離職への繋がりやすくなるのです。

★エビデンス例
(1)テキサス工科大学で行われた約200件の先行研究をまとめたメタ分析
⇒様々なスキルや能力を生かせる職場で働いた場合、仕事の満足度との間に高い相関があった。(2)ピクサーの人材流出防止策
⇒以前は役割を完全固定していたが、社内に退屈感が広がり、優秀な人材が流出。教育施設をつくり、複数のスキルを無料で学び、身に付けた技術を新たなプロジェクトで活かすように指導を開始したことで人材流出を食い止めることに成功した。
★転職時に確認すべきこと
・プロジェクト(仕事)の川上から川下まで関与することができるか?

⑥仲間(組織内に助けてくれる友人はいるか?)

「私たちは仕事を辞めるのではない、ただその場の人間関係を立ち去るのだ」という格言があるように、退職理由の多くの理由は「人間関係」であり、組織内に友人・仲間がいるかどうかは幸福度に大きく影響します。毎日8時間を気が合わない人と過ごすのは辛い毎日になるのは当然です。

★エビデンス
(1)500万人を対象におこなったアメリカのサーベイ
⇒以下の2つのことが分かった
・職場に3人以上の友人がいる人は人生の満足度が96%上がり、給料の満足度は2倍になる(実際にもらえる金額が変わらなくても給料の魅力が上がる)
・職場に最高の友人がいる場合は、仕事のモチベーションが7倍になり、作業のスピードが上がる(2)その他健康への影響
・嫌な上司の元で働く従業員は、良い上司の元で働く従業員に比べて心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが60%高くなる。
・嫌な同僚のせいで悪化したストレスは、たとえ会社を辞めても健康的なレベルに戻るまで22ヶ月かかる。
・人間関係が悪い会社では社員が高血圧や高コレストロール、糖尿病に悩む確率が20%増加する
★転職時に確認すべきこと
・その組織には、自分に似た(友人になれそうな人)がどれくらいいそうか?
(私たちは自分に似た人を好きになりやすいことが分かっているため)

⑦貢献(どれだけ世の中の役に立つか?)

満足度が高い仕事は「他人を気遣ったり、他人に新たな知見を与えるなど、他人の人生を守る要素があること」が重要なようです。「自分の仕事が他人にどう貢献しているか?」が明確になっていることが重要なのです。
確かに「人から感謝される仕事」は毎日を充実したものに変えてくれるのは理解できるのではないでしょうか?

★エビデンス
(1)シカゴ大学が約5万人の男女に対して30年かけ行った職業リサーチ
⇒満足度の高い仕事は「1位:聖職者、2位:理学療法士、3位:消防員、4位:教育関係者、5位:画家・彫刻家」、逆に満足度が低い仕事は「倉庫ピッキング、レジ打ち、工場での単純作業」などの単純作業であった。
★転職時に確認すべきこと
・その仕事がどれくらい他人の生活に影響を与えられるか?
(タスクの重要性があるかどうか?)