何故「好き」ではなく「得意」で仕事を選ぶべきなのか?~遺伝的要素で考えるあの人がすごい理由~

イチローはビジネスの世界でも一流になれたのか?

メジャーリーグで数々の記録を打ち立てたイチローは誰もが認める超一流選手。
頭脳明晰なので、ビジネスの世界でもある程度の成功を収められるかもしれませんが、野球同様に超一流のビジネスパーソンになれたかと言えば疑問です。

・自分の考えを重視する
・自分に厳しく、人にも厳しい
・1つのことを積み詰める職人気質

このような性格のイチロー選手は、多くの部下を抱えたときマネジメントがうまくできない可能性があるのではないでしょうか。(イチロー選手が引退会見で「監督は絶対に無理ですよ」と発言したのは、自己分析ができているからかもしれません。)

イチロー選手が野球の世界で一流になれたのは生まれつき

・高度な身体能力(運動神経・動体視力・筋力・柔軟性等)を持っていたから
・1つのことを積き詰める強い精神力を持っていたから

と言えるでしょう。

先天的な要素と後天的な要素としてまとめると以下のようになります。

★イチロー選手の先天的要素
・産まれ持った身体能力(運動神経・動体視力・筋力・柔軟性等)
・1つのことを突き詰められる強い精神力の土台

★イチロー選手の後天的要素

・身体能力を活かして、野球の技術を磨くことができた
・強い精神力を活かして、ハイレベルな環境であきらめずに野球を続けることができた

イチロー選手は、「ビジネスマン(起業家やサラリーマン)」ではなく、先天的要素が活かせる「プロ野球選手」を職業にしたことで一流になることができたのです。

ビジネス能力にも先天的要素がある

ビジネス界でも、新卒入社後すぐ大きな成果を出す「すごい新人」が出てくるケースがあります。
「あいつは運が良かった・良い上司に恵まれた」という運の要素で語られることが多いですが、「すごい新人」がその後も出世し続けたり、別の企業に転職して活躍したり、自ら起業して経営者になっているケースを考えると、単なる運や努力だけの問題ではないことに気づくと思います。

「すごい新人」同様、活躍し続けるビジネスマンの多くは、イチロー選手の「運動神経」のように先天的にビジネス能力が高く、普通の人と同じ環境にいても、あっという間に能力を高められるのだと私は考えています。

先天的な能力による影響

「自分には先天的なビジネス能力がない・・・」と悲観しないでください。
ビジネスで求められる能力は大きく

・コミュニケ―ション系の「対人スキル」
・計算・分析・統計などの「非対人スキル」

の2つに分類されますが、世の中には両スキルが突出して高い人、両スキルとも平均的な人、どちらかのスキルだけが高い人、両スキルとも低い人が存在します。以下の表を見てください。

名前対人スキル
(コミュニケーション能力)
非対人スキル
(計算・分析・統計能力など)
Aさん5点4点
Bさん3点3点
Cさん1点4点
Dさん3点1点

これは4人の先天的な能力(対人スキル、非対人スキル)を5点満点で点数化したものです。

・両方のスキルが平均以上でAさん
・両方のスキルが平均的なBさん
・非対人スキルのみが高いCさん
・対人スキルのみが平均的なDさん

残酷ですが、世の中のビジネスにおける先天的な能力は、この4人のように総合点に大きな違いがあり、例えばAさんのようなタイプは、どの部署に配属されても大きな成果を上げる可能性が高くなります。

不公平に感じますがこれが現実。遺伝的な要素や幼児教育段階での要素が強く、現時点で変えることが難しいことだと理解しましょう。

先天的要素を理解して仕事を選ぶ

先天的な能力は変えられませんが、人の能力には後天的な要素も強く影響します。

「人の能力=先天的スコア+後天的スコア」となるのです。

ここで考慮が必要な点があります。
それは、運動神経が良いと、野球能力が上がりやすいように、

「先天的スコアが高いスキルは、後天的スコアが上がりやすく」
「先天的スコアが低いスキルは、後天的スコアが上がりにくい」

ということです。

実際のビジネスでも、先天的スコアが高いスキルに関連する仕事を行なうと、普通の人が1日かかってマスターすることが、半日でマスターできてしまうようなケースがよくありますし、もちろんその逆もありえます。

Cさんを例に上げましょう。以下の表の通り、Cさんは先天的に「対人スキル」が低く、「非対人スキル」が高い典型的な理系人間です。

名前
対人スキル
(コミュニケーション能力)
非対人スキル
(計算・分析・統計能力など)
Cさん先天的要素1点4点
後天的要素3点5点
合計4点9点

Cさんのようなケースでは、苦手な「対人スキル(1点)」を克服しようと頑張ってしまうケースが多いですが、前述の通り、得意ではないスキルは努力してもスコアが上がりにくく非効率です。仮に「対人スキル」を平均的なスコアまで伸ばせたとしても平均的な能力では評価はされることはありません。
その反面、得意な「非対人スキル(4点)」は後天的にも伸ばしやすく、合計スコアを大きく伸ばすことが可能。努力すれば「非対人スキルが求められる仕事」においては高く評価される人材になることができます。

弱点はどこまで克服するべきか?

「先天的に得意なスキルを活かす」という話をすると「苦手なスキル(弱点)」は、どこまで克服すれば良いのか?という議論になることがありますが、仕事に支障がなければ気にする必要はありません。問題なく日常生活を送り、義務教育を受けている方であれば、多くの方は支障がないレベルになっているので弱点を気にする必要がないと言えます。

一般的に「強みを伸ばしたほうが良い」と言われるのはそのためです。

「苦手なスキル」については、苦手であることを認識することは重要です。

例えば「対人スキルが低く、会議でうまく意見が言えない」と認識できていれば、事前に説明資料を準備するなど代替手段があるからです。

得意を活かす職種の選び方

ここまでの説明で「先天的に得意なスキルを活かせる仕事」に就くべきだということはご理解いただけたのではないでしょうか?次にスキルに応じてどのような職種を選べばよいのかを説明します。

以下の表を見てください。
対人スキル、非対人スキルをさらに2つに分類し、「①調整型、②説得型、③分析型、④正確型」という4つの型に分類し、それぞのタイプを表現するキーワードと向いている職業を併記しています。

分類対人スキル
(コミュニケ―ション能力)
非対人スキル
(計算・分析・統計能力)
①調整型②説得型③分析型④正確型
キーワード調整
調和
全体最適
説得
提案
関係構築
分析
統計
情報収集
正確性
緻密性
スケジュール
向いている職業人事・総務営業マーケティング経理・財務・技術職

 

①調整型タイプ
調整型の人は、チームのバランスを取ることが得意な人です。
馴染んでいない人を見つけてサポートしたり、全体の空気を読んでチームワークを高めていくタイプ。みんなと公平に接する人が多く、人を出し抜いたり競争を嫌う傾向があります。向いている職業は「人事・総務」など社内の調和を作っていく仕事。調整型の人は同じ対人スキルのグループである「②説得型」の仕事でもうまく機能する可能性が高いです。人事のエースが元営業マンという会社が多いのも、このタイプが影響していると考えています。
②説得型タイプ
説得型の人は、物事をわかりやすく整理して伝える交渉事が得意な人です。
1つの目的達成に向けて「どう伝えれば相手にの言葉が届くのか?」を考えて思考錯誤していきます。向いている職業は「営業」など外部の人と交渉していく仕事です。交渉が得意なので「①調整型」の仕事でもうまく力を発揮する傾向があります。
③分析型タイプ
分析型の人は、仮説を立てて数値データをロジカルに分析し、1つの結論を導き出すことが得意な人です。
曖昧なことを嫌い、1つの事象に対して原因や結果を突き詰めていきます。向いている職業は「マーケティング」や「企画」など数値データを扱うような仕事です。何か新しいものを生み出すような仕事が好きですが、決まったルーティーン作業は嫌う傾向が強いのも特徴です。
④正確型タイプ
正確型の人は、コツコツと積み上げる仕事ができる人です。事前にスケジュールを組み、スケジュール通り、正確に作業を進めることが得意。このタイプの人は学生時代の夏休みの宿題も最終日に慌ててやることはありません。向いている職業は「経理」などのファイナンス系の仕事や、「エンジニア」などの技術系の仕事。間違いが許されない(正確であることが重要な)仕事で力を発揮します。

これらの型は、どれか1つだけが該当するわけではなく、どの要素が強いかを見分ける指標だと考えてください。例えば、

「②説得型」が一番強く、「③分析型」の要素が次に強い場合、
分析が必要な営業が向いているかも⇒(例)コンサルティング型営業など

「④正確型」が一番強く、「②説得型」の要素が次に強い場合
営業力が求められるエンジニア職が向いているかも⇒(例)システム営業・PMなど

という感じです。

まずは自分自身の傾向(タイプ)を知り、そのタイプにマッチしそうな職種を選ぶことで力を発揮しやすくなります。

自分自身のタイプを知る

自分自身がどのタイプであるかを理解するには、過去の行動を振り返ることが重要です。
例えば、以下のような経験が自分自身のタイプを知る上での鍵になります。

【得意】
①努力したつもりはないけど、感謝されたこと
②人よりも早くマスターできたこと
③ずっとやっていても苦にならないこと
【不得意】
④自分ではすごいと思っていても評価されないこと
⑤人よりも時間がかかってしまうこと
⑥何度やっても続かないこと

上記①~③は得意なことである可能性が高く、④~⑥は苦手なことである可能性が高いでしょう。

一度小学生時代から現在の仕事に至るまでの出来事を振り返り、以下の2点を実施してみましょう。

(1)①~⑥のようなことがないか過去を振り返る(=自己分析)
(2)親しい人に「自分自身が得意だと思うこと」「苦手だと思うこと」をヒアリングする(=他己分析)。

上記を2つを実施すると自分の得意なものが見えてくることが多いと思います。

※ただし、得意だけどやりたくないことは除外する必要があります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

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自分自身が「相対的に得意なもの、不得意なもの」を理解し、得意なものに対して、さらに努力をすることで、より評価される人材となることを理解いただけたでしょうか?

先天的要素、後天的要素の影響は5:5と言われています(7~8割が後天的要素だという研究者もいます)。
得意なものを把握できたら、自分自身の可能性を信じて後天的な努力を続けていくだけです。